Guarneri del Gesu 1741Viuxtemps

 
 今回、取り組んでいるガルネリ1741年「Viuxtemps ビュータン」は、
その輝かしい経歴のほかに、もう一つこの楽器を有名にしたエピソードがある。
「ビュータン」は”世界で一番高いバイオリン”と言われているのである。

「ビュータン」には双子と言われているもう一台の楽器がある。
1741年「Kochanski コチャンスキー」。
「ビュータン」と同じ年に製作されたこの楽器は、
一台一台、気まぐれに製作され、細部で共通点を見つけることが難しいガルネリにおいて、
アウトラインや膨らみ、コーナーの処理が良く似ており、なにより表板が同じ樹から作られている。
(F字孔は全く違うが)

Guarneri del Gesu 1741 Kochanski

7年ほど前、「コチャンスキー」はバイオリ奏者アーロン・ローザンドが使っていたが、
それを手放すことになり、オークションに出された。
ガルネリは100本ほどしか現存せず、オークションに出るのが大変稀なため、
その時の落札額が約9億円という、バイオリンとして当時の歴代最高額を記録した。
 *その後、日本音楽財団がストラディバリ1721年「Lady Blunt レディーブラン」
を売りに出し、約13億円の値がつき記録を更新した。これは「レディーブラン」がストラディバリがつけた
オリジナルのバスバーが一緒に保管されていて、歴史的価値が高いためこの値段になった。
日本音楽財団はその収益を全て東日本大震災の支援金に当てている。

この落札額を聞いて「ビュータン」を所有していた人物が(恐らく現在の所有者フートン)、
双子の楽器でさらに輝かしい経歴の「ビュータン」ならもっと高い値段でも買い手がつくだろうと、
18億円で売りに出したのである。このニュースは瞬く間に世界中を駆け巡り、
こうして「ビュータン」は”世界で一番高いバイオリン”だと世界中で知られることとなった。
しかし、結局誰も買い手がつかず、”世界で一番高い”称号は現在お預けとなっている。

この色々な意味で人々を魅了している「ビュータン」
これに挑戦するに当たり、その特異なボディーモードがターゲットであることは前回述べたが、
もう一つ重大な課題がある。
それは、どのような外観に仕上げるかという課題である。
いかんせん、そのままコピーをしては、美しくないのである。
しかし、ボディーモードの特異性は調べれば調べるほど、
ガルネリ独自の造形が深く影響していることがわかってくる。
そうなってくると、好きなように整えるわけには行かず、
音響的効果を残しながら、モダンさを加えるという、より難しい課題が立ちはだかった。

くる日もくる日も、ガルネリの大胆な造形と向き合い、少々めまいがしてきた。

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