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こちらで研究プロジェクトに携わっている関係で様々なご質問を頂きます。
「バイオリンのE線にはループエンドとボールエンドが有りますが、音が変わるのでしょうか」といったご質問を頂きました。
ループエンドとボールエンドは取り付ける金具「アジャスタ」が変わってきます。この事により二つの事が変わります。

・駒からアジャスタまでの弦の長さ

・アジャスタによるテールピース全体の重さ(質量) 

一つ目の「駒から金具までの弦の距離」と音の関係については、残念ながら近年の研究論文でも目にした事が無く、そもそも余りにも考慮する事柄が多すぎる為、研究デザインの段階から困難だと思われます。この長さの違いについては、E線で知られる弦メーカー「WARCHAL」では、ループエンドにすると距離が長くなる事により、音が柔らかくなると説明されています。
 
一方で二つ目の「金具によるテールピース全体の重さ」の変化と音との関係については、幾つかの研究が行われております。チェロでは、テールピースの重さを変える事によりウルフ音を抑える効果が知られている為、研究のテーマになりやすいのだと思います。
 バイオリンのE線用の金具には様々なタイプが有りますが、一番広く使われている合金タイプですと、ボールエンド用がループエンド用に比べて、約2g程重くなっています。2015年に行われた研究では、テールピースに2.5gの錘を取り付ける事で、楽器のボディの周波数特性がどのように変わったのかを確かめた実験が有ります(画像参照) 
 この実験では主に100hz以下のテールピースの周波数帯で大きな違いがみられますが、音に直接影響を及ぼす楽器のボディの周波数帯にも若干の違いが見て取れます。これがどれ程変化を及ぼすのか、それは楽器や演奏者によるとしか言えない程度です。
2019年に行われた、魂柱の高さによるボディ応答の変化を演奏者はどの程度感じ取れるのかという実験では、プロのバイオリニストは楽器のボディ応答の周波数特性の2hzの違いにも敏感に反応するという結果も出ていますので、そういう方だと気づく程度の変化です。また、楽器によっては音に影響しない場合も多々ありますし、他のパーツの調整の方がより違いが出るとお考え下さい。
音が良くなるアジャスタと謳う商品も見受けられますが、単純に「音が良くなる」事はありえません。
全ては楽器と演奏者の好みで決まります。理想の音を探す旅には終わりが有りませんね。

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西村翔太郎

1983年 京都府に生まれ、9歳より長崎県で育つ。国内外の製作家を訪問し製作家への道を模索しながら、高校時代に独学で2本のヴァイオリンを作り上げる。2002年 ガリンベルティを筆頭とするミラノ派のスタイルへの憧れから、ミラノ市立ヴァイオリン製作学校に入学。製作をパオラ・ヴェッキオ、ジョルジョ・カッシアーニ両氏に、ニス塗装技術をマルコ・イメール・ピッチノッティ氏に師事。2006年 クレモナに移住。ダヴィデ・ソーラ氏のヴァイオリンに感銘を受け、この年から同氏に師事。
現在は作曲家クラウディオ・モンテヴェルディの生家に工房を構えている。

2010年イタリア国内弦楽器製作コンクール ヴァイオリン部門で優勝と同時にヴィオラ部門で第3位受賞。
2014年シンガポールにて、政府関係者や各国大使の前で自身が製作したカルテットでのコンサートを催す。
2018年クレモナバイオリン博物館、音響・化学研究所によるANIMAプロジェクトの主要研究員を務める。
2018年よりマレーシア・コタキナバルにて、ボランティア活動として子供達の楽器の修理やカンファレンスを行う。

Projecto A.N.I.M.A研究員
District of Cultral Violin Making Cremona会員
関西弦楽器製作者協会会員
主な楽器使用者
アレクサンダー・スプテル氏
(ソリスト・元SSOコンサートマスター)
森下幸次 氏 
(ソリスト・大阪交響楽団コンサートマスター)
木村正貴 氏 
(東京交響楽団フォアシュピーラー)
立木茂 氏  
(ビオリスト・弦楽器指導者協会理事長
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