豊嶋泰嗣氏とクレモネーゼ ~マルタ・アルゲリッチ氏と久石譲氏との邂逅~
ストラディバリは数々の名器を残しましたが、その中でもクレモナの街の名前を冠する特別な楽器が有ります。
それはストラディバリ1715年Cremonese(クレモネーゼ)です。この楽器は、クレモナのバイオリン博物館で特に大切に保管され、宝物の間の一番奥に鎮座しております。この度、幸運な事に博物館のキュレーターの協力の元、実物を直接計測し、比べながらコピーする機会を得ました。
そして、その楽器は日本を代表するバイオリニストである豊嶋泰嗣氏の元へと渡りました。
豊嶋氏は早速コンサートで使用して頂いており、5月に来日した世界的なピアニストであるマルタ・アルゲリッチ氏とのコンサートでは、コンサート終了後にアルゲリッチ氏が豊嶋氏へ、何の楽器を使っているのかと尋ねて来たそうで、新作の楽器だと知って大変驚いたとのご報告を頂きました。数々の名バイオリニスト&名器との共演を重ねてきたアルゲリッチ氏の、新作楽器へのイメージを覆せた様で、音響研究を続け、音にひたすらこだわり製作を続けてきた事が、報われた思いでした。
また、7月に行われた音楽家・久石譲氏のコンサートでも、久石譲氏が絶大な信頼を置いている豊嶋氏の演奏の元、子供の頃から聴いていたジブリの音楽を自分の楽器で聴くことが出来、とても感慨深いものが有りました。「バイオリン製作家になりたい」と言い出した中学生時代から、兎に角「”耳をすませば”だね」と言われ続けてきました。まさかそのジブリの音楽を、久石譲さん御本人のコンサートにて、自分の楽器で聴く日が来るとは思いもしませんでした。豊嶋氏によるソロパートで音がホールに響き渡った時には、少し目頭が熱くなりました。
常に「プロの即戦力になる楽器」を目指して、音響研究を重ねてまいりました。
日本を代表するバイオリニストである豊嶋氏が、お渡しした直後から重要なコンサートで使い続けて頂いてる事は、一つの到達点であると感じております。これを糧に、更なる高みを目指していこうと決意を強くした次第です。
この楽器の写真はギャラリーページに掲載しております。