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Shotaro Nishimura

道具と油

お腹がすいたけど冷蔵庫に何もない、こうなったら道具でもカラッと揚げて。。。

いえいえ、そこまで生活は逼迫していません!
日本で買ってきた小道具(彫刻鑿)の中で一本だけ、
研ぎづらく硬いものがあったので、調整しているところです。

日本の刃物の重要な工程に「焼戻し」があります。
初めに800~1000℃に熱して焼入れをし、硬い鋼(マルテンサイト)を作るのですが、
これでは硬すぎて脆く、刃こぼれをしてしまうので、
もう一度100~600℃に熱して、ゆっくり空冷します。
そうすると靭性に優れた鋼(ソルバイト、トルーサイト)になります。
 これを「焼戻し」といいます。

この小道具は、私の用途にはどうしても硬すぎたので、
一番簡単な方法、食用油で再度焼き戻しです。
160~170℃で熱するのですが、本来は高温用温度計で油の温度を管理します。
しかしここで、日頃料理ばかりしてきた経験が活きてきました!
油の質感や発する温度で、ほぼ温度がわかるのです。
おかげで天ぷらを揚げる感じで、簡単に焼戻しができました。
研ぎやすさも切れ味も、好み通りになってくれました。
良い揚げ上がりです。

日頃行っていることが、どこで役に立つかわかりませんね。
イタリア語の言い回しに、  ”Tutto fa  il brodo”  というものがあります。
直訳すると ”全ての事は出汁になる” 
「全ての行いは、何かの役に立つ」という意味です。
 今回は天ぷらが”出汁”になってくれました。

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