new viola plan
新しい小さめのビオラを設計。クワルテットを主な活動の場にしている方へのビオラなので、小さいながら、ビオラらしさ、深い音とパワーをどれだけ維持できるかが、落とし所。純粋に大きなビオラを縮小すればよいというものではなく、必要な弦長と、望むF字孔のサイズから、全体のバランスを整えていく作業が続く。雲形定規で引いたり、過去のモデルから一部を持ってきたり。描いては消して、また描いて。 今の時代、PC上でCADなどで進めていくのが普通だが、1/1サイズで、手で線を引いていくほうがより直感的で、手から出る無意識のブレが、良い結果をもたらすような気がして、いまだに不効率でも手で引いている。こうして設計をしていると、過去の製作家がいかに知恵を凝らし、美的感覚にも優れていたかを思い知らされる。「音楽のための道具」としての域を超えた、造形美への思いを感じる。ゆえに、普通「道具」とはアノニマスデザイン的評価や、デュオニソス的要素が強く出るものだが、作家性と機能の融合が重視されるバイオリンは、他の道具とは一線を画すのだろう。ここまで思いをめぐらした所で、しかし作る側は「音楽のための道具」であるということを忘れてはいけないと、自分を戒めた。航空機の設計者が、「尾翼の角度を4度変えても性能に変化がない。その時には美しいほうを選ぶ」と話していた。 ここに立脚していなければならない。
peace of maind
長くイタリアを離れて、沢山の人に触れ合い、いろいろな文化に接して、とても刺激的な日々を過ごし、自分の中の開放的な面がより前面に出ていた。しかし、こうして木を削り、木に触れ、木の香りをかぐと、本来の自分がゆっくりと戻ってくる。
Violin conference in Singapore
音楽は国境を軽々と越えていく。しかし楽器の知識や魅力はなかなか広まらない。そこにストーリーが、ヒストリーがある物は、伝えるのにも時間がかかる。こちらから届けに行かねば、 グローバリズムとともに押し寄せる消費主義に、呑み込まれてしまう。