Kashmir woodwork
ミラノの骨董市で出会った、インド・カシミール地方で使われていたという、布織物用のウッドスタンプ。 とても深くかなりの精度で彫り込まれている。 名もなき木工職人の手仕事との出会いに、背筋を正された。 歴史哲学者ウォルター・ベンヤミンの言葉がよぎった。「名もなき者たちの記憶に敬意を払うことは、有名な者たちにそうすることよりも難しい。名もなき者たちの記憶に、歴史の構築は捧げられる。」
Chiesa Santa Rita
聖リータ祭我が家の裏にある聖リータ教会で、聖人暦の聖リータの日にあわせて特別礼拝が行われた。女性や子供、家庭の守護聖人の聖リータは、バラがシンボルで女性に人気の由縁ともなっている。 礼拝は自宅の庭などから持ってきたバラに、聖水をかけてもらい持ち帰り、家内安全を願うというもの。聖リータの奇跡の一つに、バラの香りが修道院中に立ち込めたと言い伝えがあり、礼拝中の教会もバラの芳醇な香りで立ち篭めるなか、大勢の女性達が一身に祈りを捧げていた。イタリア人の聖人に対する姿勢は、日本の神道・八百万の神に通ずるものを感じる。ある人類学者が「多神教には人間側が用途に合わせて神を選択するという柔軟な姿勢がある」と言っている。 一神教の中に用意された選択の自由。文化や思想に柔軟さと豊潤さを齎す源ではないか。
Fondazione Prada
Fondazione Prada/プラダ財団 by OMA 世界中で空間から商品までが均質化していくなか、プラダ財団が出した答えは、「異質なものを並列に存在させる」こと。ロンドンのテートモダンと同じコンセプトだが、プラダ財団はもっと野心的でエキサイティングだ。ぶつかり合い、溶け合い、比べ合い。その中で”何か”を見出すことを、こちら側に投げかけてくる。 この試みは、自分の製作活動に大きな勇気を与えてくれる。クラシカルなラインの中に、どうモダンさを落とし込ませるか。潜ませるのか、ぶつけるのか。躊躇した時にここに来れば、何かが見いだせるかもしれない。